◇昔のПсиニュース◇
(Псиニュースの過去ログです)

◇平成15年04月◇

05月17日:Be a gothic-XXIII[MHの半身]
05月12日:DoCoMo、505i用Flashプレーヤの仕様公開
05月10日:Be a gothic-XXII[まさにこの世は生き地獄]
05月03日:Be a gothic-XXI[悪意と悲劇の行く先は]

 

平成15年05月17日 Be a gothic-XXIII[MHの半身]

 というわけで土曜日恒例の「Be a gothic」、今日は第23回です。23といえば永井真理子さんの「23才」ですが、アルバム「キャッチボール」なんて世間的に有名な曲が一曲も無いアルバムを知っているヒトがヴィジュも好きなんてことは、毎号買っている雑誌が各種ファッション雑誌と週刊少年チャンピオンだと豪語するシロガネーゼくらいに有り得ないので、とりあえず脇に置きます。どんな導入ですか
 「Be a gothic」では、ちっともヴィジュ一辺倒では無いにせよヴィジュが大好きで堪らないПсиが最近のヴィジュのアイテムをレビュー、ヴィジュよりも世間体をとった悲しい過去を持つヒトを単純に呼び戻すコーナーです。
 なお、ここでの記述はあくまでПсиの価値観に基づくものですので、みなさんの価値観とは違っている可能性がある上に、鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。白金台にヴィジュの殿堂を


 ヴィジュ界隈においてのプレス数に纏わる諸々は、前にお話した様な気がしなくもないので、今日はもうちょっと違うことをお話しようと思います。これは、主にデビュー後のバンドに言えることですが、初期のアイテムが知らない内に絶版になっていることが良くあります。単純に売れないからと思えなくもありませんが、それにしては絶版アイテムのチョイスが恣意的だったりもして、ファンとしてはそのバンドの古き良き日を自分自身の手で封印する瞬間を見ることとなり、とりあえず泣けます
 絶版といってПсиが思い出すのはGLAYです。GLAYというバンドに関しては、取り立てて説明の必要は無いでしょう。YOSHIKIプロデュースでいかにもヴィジュなルックスでデビューしながらヴィジュとして見られることを否定し、殆どの楽曲の作詞・作曲をしているTAKUROが終わったらその時点ですべてが終わりそうな、ユニットなのかバンドなのかいまいち不明な、不思議なバンドです。しかし、とりあえず売れたバンドは漫画になるという不名誉な金字塔を建てたというだけでも、GLAYの功績は大きいと言えるのかもしれません。嫌味っぽいのに他意はありません
 そんなGLAYは、ある日突然「口唇」までのシングル11枚を廃盤にしてしまいました。これは昨年の話で、ヴィジュとしての自分達をそんなにも捨てたいのかと香ばしい色の議論を呼んだのですが・・・時期や詳細に関して、昔メモかニュースで書いたと思いましたが、今見返してみてもそれっぽい記述は無し。それどころか昔の記事を迂闊にも読み返してしまって恥ずかしくなったので、話題を変えることにします。

 プレスの問題などで消え去ったままのアイテムは、時にファンにおかしな格差を生み出します。これを解消する方法といえば、当然再プレスを行うことなのですが・・・ヴィジュのアイテムには最プレス時にはジャケットが違うことが多々ある為、それはそれで混乱を呼ぶことになります。つまり、以前のプレスを持っているヒトは、ジャケットや追加目当てに新しいプレスを購入し、アイテム自体持っていないヒトは古いプレスの方を欲しがる・・・本当に無益な悪循環ですね。
 この悪循環にある意味素敵な解決法を投じたのが黒夢です。黒夢は、ある時期からシングルのカップリングにライブで演奏する確率の高い過去の曲の新ヴァージョンを次々と収録していきました。過去の曲というのが殆ど三人時代の曲だった為、三人時代のアルバムは全て廃盤にするつもりではと邪推をしていたら、本当にやってしまいました。シングル「for dear」「ICE MY LIFE」「優しい悲劇」「Miss MOONLIGHT」の4枚とアルバム「迷える百合達〜Romance Of Scarlet〜」「Cruel」「feminism」の3枚が一度に廃盤指定。その後、アルバム3枚は再販されましたが、ジャケットが白バックにタイトルが書いてあるだけのシンプルなものに変更。あの感じでは中も間違いなく白黒でしょうから、新規のファンは臣の写真や湯にセックスな清春の写真を見ることはできなくなってしまったわけです。もっとも、再プレス前のものは今も普通に中古で売られていますけど。

 そんなわけで、新参のファンには嬉しいけれど、ジャケットだけ変更されるとちょっとアレな再プレスに果敢に挑んだバンドがいます。その名もFatima(読み方:ふぁてぃま)。しかも、同時に三枚。ジャケットのデザインに共通性があることから、普通に三枚同時発売だと思っていたのですけれど、よく調べてみたら、再プレスだったそうです。それにしても、「リリース第一弾CDが発売日を待たずに予約完売したため急遽2nd-Pressのリリースが決定」って、一体どういうことでしょう・・・?
 上記リンクを踏まれた方ならお判りかと思いますが、シングル3枚は「SSB」が青、「NOBLE KING SNAKE」が赤、「M:I-44」が黄色と色分けされています。ショップでこれら三枚を見た無知な子羊だったПсиは、赤と青の対称性を嫌って「M:I-44」のみを購入。その日は他に6点ほどアイテムを購入する予定だった為、3曲入りシングル\1,500を3枚追加する余裕は無かったのでした。
 というわけで、早速M:I-44をコンポにセット。どきどきしながら再生です。


 M:I-44[Fatima]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :(判定不可)
 ネタ度:☆****

 唖然シングルの頭から終わりまで口を開けたまま聴いたのは、かなり久しぶりのことです。ストーリー性を持った歌詞と、007を彷彿とさせるコード弾き+三音目伸ばしなフレーズが印象的な「Mr.Imbalance-44」に早々からノックアウトされました。2曲目の「Humiliate me more,Darlin'」は普通にライヴが面白そうですし、3曲目の「少女とクローゼット」は今年のПсиの脳内最大瞬間風速を更新するくらいの勢いです。
 単純にCDを気に入ったПсиは、3曲をWMA形式に変換してPCでヘヴィローテーション。そうしている間に、他の2枚への期待が募ってくるのも仕方の無いことです。実際、「M:I-44」を聴いてからのПсиは後悔し通し。結局、折を見て「SSB」「NOBLE KING SNAKE」も購入したのでした。「気に入ったら他の2枚も買えばいい」とは思っていましたが、まさか1週間しないで買い足すことになるとまでは思っていなかったのでした。


 SSB[Fatima]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆**
 映像 :(判定不可)
 ネタ度:☆****

 重いです。・・・「重い」というと語弊がありますけど。アルバムで言えば三曲目以降、もっと言えばカップリングな曲が満載。「Sticky Flower」の早口っぷりや「Blue velvet」の静と動のメリハリが、Псиにはとても心地良いです。初回聴きでココロを奪った「M:I-44」とは違って、「SSB」はスルメです。初回聴きで何箇所かクセになりそうなポイントを耳に残しつつ、ヘヴィローテーション時にそこを足がかりに曲を好きになっていく・・・とりあえず、「Blue velvet」はメロディが綺麗で素で好きです。さっきから三極目ばかり好んでいる気がします

 NOBLE KING SNAKE[Fatima]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :(判定不可)
 ネタ度:☆****

 スカ。吃驚しました。・・・中身が無いという意味ではありませんよ?念の為。「東京スカパラダイスオーケストラ」の「スカ」です。それでもなんだか判らないという方は、EGO-WRAPPIN'の「くちばしにチェリー」を想像して頂けると良いと思います。標題曲「Noble King Snake」は、ブラスサウンドと裏打ちのリズムが大変素敵な上、無理に他ジャンルに手を広げて失敗した感じというデビュー直前のバンドがやってしまいがちな器用貧乏さが一切無い、とても上質なトラックと言えます。
 リズム隊がとんでもなくトリッキーな上に、間奏の転調「第九」とてつもなく聴いてて不安になる「Public eyes」、そして圧巻は「赤い薔薇のスープ」。今度はどことなくジャジーです。最も、時々入り込んでくる歪んだギターや裏で動いている打ち込み音、その他諸々の要因で「ジャジー」で止まってはいますけれど、はっきり言ってジャンルが何かなんて関係無く恰好良いです。やっぱり三曲目


 ひさしぶりの歌詞転載、「少女とクローゼット」と「赤い薔薇のスープ」のどちらにするか本気で悩みましたけど、やっぱり第一印象に賭けることにして、「少女とクローゼット」の歌詞を見てみることにしましょう。ちなみに、作曲はGuitarの4ge(しげ)、作詞は・・・「屈折した恋愛感」。・・・「誰ですか」という突っ込みの前に胸がきゅんきゅんしているПсиは、もう帰って来ることができない気がします。
 そんなことはともかく、歌詞を見てみましょう。

 近頃あの子の心の扉、鍵が掛かってる
鍵を探しても見つからないからバールでこじ開けてみる
両手いっぱいの花束抱え遊びに来たのに
野次を投げつけられベルベットのスーツに焦げ跡ついたんだ

開いた胸元と下着が見えるほどのローライズ
癪に障るとか、品がないとか、けちをつけるにつけられず
シャンパングラスにトルエン混ぜたココアを注いで
ターコイズブルーで統一されたハートにそれを投げつけた

この愛情はどこか歪んでいるけど
そこらの多情な奴とは質が違うんだ

ずっと側にいたくて無理に押さえつけて 気の利いた嘘じゃ今更悲しいね
パレード照らす月が溶けて無くなるまで 眩しすぎて君は眼を閉じたままさ
僕は黙ってその手握ってた

今日は一日夜でした

この愛情はどこか歪んでいるけど
そこらの多情な奴とは質が違うんだ

ずっと側にいたくて無理に押さえつけて 気の利いた嘘じゃ今更悲しいね
パレード照らす月が溶けて無くなるまで 眩しすぎて君は眼を閉じたままさ
右肩に額あて恋の唄聞かせても 届かない事に変わりは無いよね
パレード照らす月が溶けて無くなるまで 眩しすぎて君は眼を閉じたままさ
そりゃそれなりに僕も解ってた でもまだそれを認めてしまうのが怖かった

今日も一日夜でした

 Пси、この歌詞のセンスが大好きです。どこか支離滅裂していて、それでいて直向。サビまで一気に駆け抜けた後の「今日は一日夜でした」の意味を考えると、とても深くて素敵です。
 そんなわけで、ПсиはFatimaにどっぷり浸かってしまいそうです。何より、3枚のシングルに収録されていたどの曲もライヴ映えしそうな曲ばかり。ПсиはFatimaのライヴへ行ってみたくて仕方がありません。正直、ここまで思ったバンドもひさしぶりです。

 ところで、今回のCD3枚のライナーを並べると、性格診断ができます。YES/NOのチャート診断で、メンバーの誰タイプかが判定できるという謎のもの。ただし、3枚持っていないとチャートも回答も完成しません。構成としては面白いと思いますけど、3枚とも再販なんですよね・・・?ということは、どれか1枚だけ買うヒトなども充分に想定できるわけで、むしろ3枚とも買ったПсиの様なケースは稀少なのではないかと思うのですけれど・・・。
 というよりも、初回で全て持っているヒトはライナーがそんな構成になっていることを知らない可能性があるわけで。ファン的には微妙に美味しそうなこのチャート、そう考えると一寸アレだと思います。あと、構造的に「NOBLE KING SNAKE」が回答の頭に来る為に「NOBLE KING SNAKE」だけはメンバーの顔写真付きなのもどうかと思います。
 ちなみに、Псиはsanakaタイプだそうで・・・

あらゆる束縛が大キライでとにかく自由な身でいたい人。ひらめきは天才的で突然良いアイディアを思いつき、特許取得で大金もちになるかも!?何をするにも「始めようか!」と言わないと何も始められない。同じ場所に長時間居れなくて携帯電話は歩きながらでないと話せなかったりと、基本的に狂っている。みんなといてもふっといなくなったりして行動パターンは謎。口癖は「もっとおまえが欲しい」とりあえず何でも欲しがる欲求のかたまり。
まさにフリーダムでエクセレント。適職はスーパースター。

 たぶん喜ぶべきなのでしょう。Псиは束縛が嫌いというわけではなく、不合理で理不尽なことが許せないだけなのですけれど・・・とりあえず、「基本的に狂っている」と言われた時点ですべての反論が無駄なので、よしとしましょう。そんなわけで、これからは「もっとおまえが欲しい」を口癖にします嘘ですПсиにはとても無理です
 なぜだかちょっぴりしくなって来たので、そろそろ〆ます。

 Псиは、Fatimaの楽曲に特上の祝福を送信すると同時に、あなたがもっとほしいです。あああああ(背中にむず痒さを感じながら)。

 

平成15年05月12日 DoCoMo、505i用Flashプレーヤの仕様公開

 PHSは死なず。こんばんは、Псиです。最近、「P-in Free 1S」を購入したПсиは、何気にPHSが大好き。今や世間的なPHSの認識は通信デバイスwithちょっぴり通話といったものであり、とりあえずPメールの存在は忘却の彼方。半角文字20文字が10円で送信できて、なおかつショートメールと違って返信が可能とフットワークも軽いPメールは、普通に便利だと思うのですけれど。
 ちなみに、Псиの購入した「P-in Free 1S」は、Pメール互換の「きゃらトーク」が使用可能です。どうやって使うのかさっぱり判りませんが、既存のテクノロジーを一応捨てずにいるその姿勢は・・・一応、評価しておきましょうか

 Псиは、消え行く運命から逃れようと足掻いているPHSに祝福を送ります。


 本当にこれで終わったら、ちょっとアレであんまりなので、これからまじめになろうと思います。更正を志す少年の前途は常に多難ですが、714歳で性別も無いくせに少年を名乗るのは有り得ないので、普通に話を続けることにします。
 みなさんは、Flashというツールをご存知でしょうか。暇さえあればネットを見ているという、ミーハー以上ヒッキー以下の辛気臭い方なら、どこかでFlashで作られたコンテンツを見たことがあると思います。
 macromedia社の開発したFlashは、Web上に動的でインタラクティブなコンテンツを制作する為のツールです。ベクター方式で画像を保持する為に拡大・縮小をしても画像が劣化せず、加えてキーフレーム方式を採用している為に、低容量のファイルサイズでアニメーションを作成することができます。もっとも、ライブラリの概念やレイヤーの仕組みを一通り理解していないと、滅んだクレイアニメーション程度にしか動かない上に容量が大きい、というネット資源の無駄使いファイルが容易に完成してしまう為、注意が必要です。
 そんなFlashですが、ポエヤマさんの様にアニメーション作成ツールとしても使える他、ボタンやテキストフィールドに簡単なスクリプトを割り当てることで、簡易インタフェイスとしても動作します。具体的にはこんな感じでしょうか。例としてはアレですが

 さて、Flashで作成された「.swf」形式のファイルを再生する為には、Flashプレーヤというソフトウェアが必要です。FlashプレーヤはPC版しかありませんので、携帯電話やPDAなどではFlashコンテンツを読み込むことはできません。Псиが「p-in free 1S」と「CLIE T400」を使って白黒の仮想世界を堪能している際に、たまに一画面分の空白の後に「このページをご覧になるには、Flashプレーヤが必要です」という表記だけのページを見ることがありますが、そんな時は決まって世界を呪いたくなります

 でも、これからは、Псиはそこまで頻繁に世界を呪わなくても済むのかもしれません。NTT DoCoMoは、近日発売予定の携帯電話「505i」シリーズに採用されたFlashプレーヤの仕様を公開しました

 505iシリーズに搭載される「Flash」は、パソコン向けサイトで広く普及しているSWF形式のデータをiモード端末で再生できるようにしたもの。正式には、「Macromedia Flash Lite for i-mode」と呼ばれる。パソコン版における“Flash 4”と同等の機能がサポートされているが、セキュリティ面などを考慮して、一部のアクションスクリプトなどで機能制限が施されている。なお、コンテンツ作成にあたっては、Macromediaの「Flash MX」向けプラグインが必要。

 色々と見るべき所はありますが、Псиにとっての一番のポイントは「Flash4互換」という点です。Flashは、広く世に出たFlash2の後に、もう一度大きな波をくぐっています。それがFlash4で、スクリプトの拡張、オブジェクトのドラッグアンドドロップへの対応、視覚エフェクトの強化等の、大幅な機能的改善が行われました。余談ですが、Flash4は普通に変数が使えますが、普通にCGIとも連携が取れる為、インタフェイスが異常に凝った掲示板を作成することも可能です。利便性はさておいて
 後から登場したものに機能を移行する場合、遥か昔のヴァージョンに立ち返る例は、そうそう珍しいことではありません。そんな状況を鑑みると、今回の移植はなかなか頑張ったのではないかと思います。・・・もっとも、その後のFlashの拡張はインタフェイス変更ばかりで、機能的にはJREやXMLに対応という玄人向けのものばかり。その意味では、Flash4は現状で遡ることが許される最古のヴァージョンといえなくもありませんけれど。てっきり最初は2か3互換でお茶を濁すだろうと邪推していたПсиには、嬉しい限りです。
 ただ、開発には「Flash MX」が必要ということなので、4でヴァージョンアップを止めているПсиには作成不可能です。もっとも、携帯向けのFlashコンテンツを作る予定は皆無ですけれど。

 また、記事はこんな風に続きます。

 今回発表された仕様によると、端末上でFlashを再生するパターンは、HTML内に埋め込み、アニメーション再生のみを行なう「インライン再生」と、Flashのみを画面に表示して、キー操作も可能な「インタラクティブ再生」の2通り。最大ファイルサイズは505iシリーズの上限である20KB。また、フォントは1種類のみの指定が可能で、端末内のフォントで最も大きなサイズのものが利用されるほか、iモード用絵文字も利用可能。

 ゴノレゴは駄目ですか。20kが上限ということは、ネットに常駐しているヒトを沸かせた数々のFlashコンテンツアーカイブの携帯は、夢に終わってしまいそうです。もっとも、件のプラグインを導入した後、携帯用に.swfファイルを書き出せば、相応にリサイズされるのかもしれませんけれど。
 でも、i-mode用の絵文字を用意という点などを見ると、これは「携帯電話で既存のWebサイトをなんとか見る努力をする」為のものと言うよりも、「PC用サイトと携帯用サイトの棲み分けを強化する」方向へ持っていきたいのかなあ、という気がします。

 本来、HTMLはSGMLの流れを汲んでいるので、閲覧環境には全く依存しない筈でした。しかし、「動的なHTML」という「ミニジャンボクッション」並みにミニなのかジャンボなのか判らないブラウザ依存の不思議なものが登場したのに加え、携帯用デバイスに特化したHTMLの氾濫などを見るに、あるドキュメントをいろんなデバイスで見る為の負担はベンダーよりもサイト製作者の方に比重が大きくなっている気がするのです。

 Псиは、imodeがFlashに対応すると知った時、PCと携帯の垣根が少しは低くなるに違いないと思っていました。携帯電話のハードの進歩は目覚しいものがありますし、ひょっとしたら640x480Zaurusに追いつく日も遠くないかもしれません。・・・ごめんなさい、それはさすがにオーバーだと思いますが、携帯電話がハード的に高いポテンシャルを秘めていることは確かです。しかし、

 Macromedia Flashは、PC向けのWebでアニメーションプラットフォームとして広く普及している技術。Flashといっても、PC向けのものがそのまま動くわけではなく、「携帯電話に対応した仕様のFlash」(ドコモ広報部)となる。また、この仕様はドコモのWebページにある「作ろうiモードコンテンツ」で公開される予定。

 という記述を見て、がっかりした覚えがあります。なんだかんだ言ってimode用じゃなくても再生しようとすれば再生できるんじゃないかとは思っていましたが、さすがに20kbなんて壁を示された日には、ちょっとどうにもならなさそうです。また、「imode用」ということは、J-sky用やez-web用が別に登場、独自規格を搭載ということも考えられます。imodeの絵文字は既に独自規格の筈ですし
 以上、Webの閲覧環境が更に分裂する様子をお届けしました。

 Псиは、「どんな環境でも閲覧可能なサイト」をポリシーにサイトを運営しているヒトに尊敬との念と祝福を送信すると共に、PHSを蔑ろにするすべてのヒトに呪いを送信します

 

平成15年05月10日 Be a gothic-XXII[まさにこの世は生き地獄]

 というわけで、土曜日恒例の「Be a gothic」、今日はたぶん第22回です。
 「Be a gothic」では、昔のヴィジュしか知らないПсиが最近のヴィジュのアイテムをレビュー、周囲には「あがった」と公言しつつも三部作といったら読み難い漢字3つを容易に思い浮かべるヒトの肩に微笑みながらやさしく手を置くコーナーです。
 なお、ここでの記述はあくまでПсиの価値観に基づくものですので、みなさんの価値観とは違っている可能性がある上に、鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。このコトバを守らないと、背中の煤け具合がより進行
 ちなみに、今月は三枚もの特集です。・・・理由ですか?いえ、ただなんとなく


 連作としてアイテムを発表することは、ヴィジュの界隈に限らずよくあることです。accessの解散間際のシングル三枚、所謂ホモ三部作というあまりにもアレな呼ばれ方をしたシングル三枚やglobeの四連作シングルなど、枚挙に暇がありません。小室哲哉大先生関連のユニットばかりですが、特に他意はありません。
 普通、連作と言った場合は、アイテムを定期的に出すのは勿論、それらアイテムに一貫したストーリー性やコンセプトを持っています。激しくイメージ商売であるところのヴィジュの界隈で、この連作という手段が使われない筈がありません。ヴィジュ界隈でのデファクトスタンダードは、Gargoyleの前期三部作「(みそぎ)」「(ふれぶみ)」「(あらたま)」か、Xのデビュー後のシングル三枚「紅」「ENDLESS RAIN」「WEEK END」でしょう。
 かつて、雑誌に掲載されている貴重盤専門店の広告がただの表だった頃、毎号毎号「Gargoyle三部作の限定版、少数入荷!」という広告を見ては、なんだかわからないけど凄そうだと思い込んでいたヒトも少なく無かった筈です。ちなみに、Gargoyleは「新三部作」として「我意在-GAIA-」「フューチャードラッグ」「倭」を発表。空宙水族館さんのテキストによると、平均存続年数が6.9年らしいこの界隈で、去年15周年を迎えたGargoyleはまだまだ元気です。
 Xのシングル三部作は、デビュー作であるアルバム「BLUE BLOOD」に収録された三曲をシングルとして提供したもの。「紅」は絶望と衝動、「ENDLESS RAIN」は癒しの雨、そして「WEEK END」は自殺の衝動と、世にも辛気臭いストーリーを描いた連作。演奏的にも、アルバムのトラックとはアレンジも音も異なる新作となっている為、アルバム発売後にリカット3枚という後から考えてみるとかなり無茶な販売方法だったにも関わらず、かなり売れました。・・・売れた理由として三枚とも初回限定版があったことやタイアップがついたこと、当時のXファンの多くは疑いが無かったことを挙げる方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうこと言うヒト、嫌いです

 Псиの印象では、ヴィジュの界隈では「対」が流行っていたと見ました。つまり、2種類のアイテムでコンセプトを完結させる手法です。2種類の場合、同時発売をしてもいつも資金の工面に困るファンもなんとか許容できそうな金額になりますし、いくつもアイテムを重ねるよりももっと強烈な意味付けが可能となります。最終的にはバンドの力量に依存するのは当然ですが、ともかく連作ともなれば話題性も微妙に上昇。ショップとしても前作の売れ方を見てから入荷数が決められるので、バンド的に安定収入は得られるでしょうけど、単発よりもシビアな現実を見ることになるでしょう。
 さて、つい最近も連作に挑んだバンドがいます。それも、CDではなくDVDで。6月に発表するアルバムのプレ・ストーリーを、2月から毎月発売するDVDシングルで描いていくという素敵な試みをしているのが、今回紹介するバンド「犬神サーカス団」(読み方:いぬがみさーかすだん)です。

 犬神サーカス団は、かつてテレビ朝日系列で放送されていたインディーバンド発掘番組「えびす温泉」に登場、当時から無口でずっと無表情の女性ヴォーカルお調子者のメンバーというアングラなバンドにありがちなスタイルを貫いていました。かなりやりすぎの感はありましたが
 その頃から、Псиの犬神サーカス団に対する知識は完全に止まっています。ショップへ行けばアイテムを目にする機会はありますが、とりあえず雰囲気だけは当時と変わっていなさそうなことくらいしか判りません。当時と同じく、日本人形を抱いて「私はウジ虫!」とか歌っているのでしょうか。
 興味はあってもなんとなくCDを手に取る勇気が無かったПсиにとって、今回のDVDシングルの話は大変美味しいです。なにより、映像も歌も入って\1,000という価格設定が美味しいです。Псиは喜び勇んでDVDシングル「黄泉の国」を購入、その後も「洗脳」「鎮魂歌〜レクイエム〜」とアイテムを買い続けました。今日は、このDVD三枚をレビューしたいと思います。

 「黄泉の国」のパッケージ裏面には、こんなことが書いてあります。

西暦200X年。
地球規模の大恐慌の果てに人類は希望を失っていた。
そんな中
「死んでいったかつてのロックスター達を蘇生させ、
この世に理想郷を築くのだ」と唱える
暗黒教団が出現した!!

その名も<神の犬>。

教団員は凶子のとりおこなう儀式によって
ロックスターの眠る黄泉の国へと旅立つのであった。

 なんですか、それは。ロックスターの蘇生と理想郷の結びつきがさっぱり判りませんが、ともかく御託を並べる前にDVDを見てみましょう。・・・ちなみに、文中の「凶子」というのは犬神サーカス団のヴォーカル、犬神凶子さんです。人物関係やバンドの背景をまず知りたい、というシチュエーション好きの方は、公式サイトの「はじめに」というコンテンツを見ると良いと思います。
 それでは、早速DVDを見てみましょう。とりあえず、全作品を一度に通して見て、率直な評価を付けてみようと思います。作品の詳細はその後。まず、1枚目の「黄泉の国」をPS2にセットして・・・


 黄泉の国+洗脳+鎮魂歌〜レクイエム〜[犬神サーカス団]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆**
 映像 :☆☆☆**
 ネタ度:☆☆☆☆*

 凶子さん、こんなに恰幅良かったでしたっけ?「えびす温泉」の時は小柄な少女のイメージだったのですけれど。と、そんなうろ覚えの昔話はともかく、この三枚の内容です。ちょっとまとめてみると、

[黄泉の国]神の犬の集会・黄泉への旅立ち

[洗脳]久しぶりに逢った販売員の友人に騙されて、いらないものを大量に買わされる

[鎮魂歌]唐突に世界が滅亡。すべてが瓦解した世界に歌声が響く

 なんですかそれは。全体的な話の流れも然ることながら、特に二番目がわかりません。・・・三本のお話を繋げようとすると昭和の狂気小説ドグラマグラの前半部分並みに混沌としてしまいますが、それぞれが世界観を共有した独立したお話として見れば、なんとなく流れが掴める気がします。というわけで、1本ずつ軽く見ていくことにしましょう。

 黄泉の国[犬神サーカス団]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :☆☆☆**
 ネタ度:☆☆☆☆*

 大昔の宇宙刑事ものの敵のアジトみたいな場所で、装束+覆面のヒトたちが凶子さんを崇めています。時期が時期だけに簡単なゴシップ記事が作れそうな映像ですが、装束は白く無いのが残念です。曲的には、Aメロのヴォーカル中はドラムだけが暴れる類の激しいロック。また、曲調が派手に変化したり、ドラムの犬神明さんのラップが入ったりと、普通に素敵な曲です。
 三枚ともライナーが無いので歌詞は聴いた範囲でしかわかりませんが、とりあえず犬神サーカス団特有のアレなタームが満載な歌詞。とりあえず間奏直前の「遺伝子抜き出し培養すれば ロックのスターが蘇る」というコブシの効いた歌い回しの歌詞が、とても印象的です。結構色々なことをしている上に、曲も(ヴィジュ好きには)聴きやすく、興味を持ったヒトが踏絵として購入するには、大変お薦めできるDVDだと思います。メイキングが笑えますし

 洗脳[犬神サーカス団]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆**
 映像 :☆☆☆☆*
 ネタ度:☆☆☆☆☆

 そして、問題の焦点である「洗脳」ですが、一昔前のトレンディードラマみたいなタイトルロゴとグループサウンド調のイントロが平和すぎて不安を掻き立てます。カメラは喫茶店の中に入り、カウンターの隅にあるテレビを映します。テレビでは凶子さんがこんなことを言いながら大笑い。

「あなたは神を信じますか?
 仏を信じますか?
 あなたは今、幸せですか?
 ハハハハハハ」

 タイトルは「洗脳」なのに、グループサウンド調の軽い曲思わず横揺れです。なのに歌詞は、3年ぶりに再会した友人にまくし立てられなんだか知らない内に色々なものを買わされていたけど質が良いので後悔なんかしていないといった歌詞。なにかあったのでしょうか。Bメロの「決して怪しい品物じゃないから安心よ」「決して怪しい宗教じゃないから安心よ」というやっぱりコブシの効いた唱法が印象的な上に、サビの「洗脳解けたら全部ゴミ」という繰り返しが逆におさかな天国的洗脳をПсиに施します。ううう。
 また、映像の方は上の歌詞をそのまま映像にした感じです。キャリアウーマン風の昔の友人と喫茶店で普通に話す凶子さんの図は、正に江戸川乱歩の小説の挿絵並みに不思議。でも、夜眠れなくなる程怖くはないので安心です
 「神の犬」がどうこうという下りは、間奏部分の情次2号さんとジンさん扮するサラリーマンの会話に出てくるだけです。ただ、直接「神の犬」の話には結びつかないまでも、浮世の世知辛さは容易にそうぞうできるこのお話、おそらく「神の犬」が跋扈する現代社会のダークサイドを浮き彫りにしているのに違い在りません。微妙に社会派です。勢いとはいえ持ち上げすぎです
 映像特典の「洗脳外伝」は・・・まあ、見て下さいとれんでぃ

 鎮魂歌〜レクイエム〜[犬神サーカス団]
 総合 :☆☆☆**
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :☆☆☆☆*
 ネタ度:☆****

 世界が滅びます。唐突に臨時ニュースが始まり、宇宙から飛来した隕石を他国からのミサイルだと勘違いしたアンゴルモワ共和国が報復として核ミサイルを発射、人類の滅亡は免れない旨をアナウンサーが淡々と語ります。その後、滅びを連想させる写真や映像をフラッシュバックさせながら、荒廃した街の外れをバックに朗々と歌う四人。曲も大変綺麗なバラードで、ライナーノートが無いのが大変悔やまれます。
 先程の「洗脳」で展開が突飛なのに免疫はできたと思っていましたが、ここまで急だと突っ込みのコトバすらありません。他の2枚と違い、このDVDにはカップリングとしてもう1曲「地獄の子守唄」のライヴヴァージョン(興行編)が入っています。この曲も切なくなる程素敵な歌で、ライナーノートが無いのはアルバム「地獄の子守唄」を買わせる為の戦略ではないかと疑ってしまう程です。ただ、「地獄の子守唄」のジャケットは日野日出志先生描き下ろしの為、Псиは怖くて買えません

 「地獄の子守唄」後は、静かなピアノが流れる中ライヴのダイジェスト映像が流れます。情次2号さんが飛んだりする様をぼーっと見ていると、その内画面が暗くなり、こんな字幕が。

西暦200X年。

世界は闇につつまれた。

地球規模の大恐慌の果てに失業者は後を絶たず、
やり場のない怒りを抱えた人々は犯罪行為を繰り返す。

生まれたばかりの赤子は口べらしの為に殺され、
若者たちは集団自殺を試みる。

・・・もはや、誰もが希望という言葉を忘れていた。

この病んだ時代に人々は様々な新興宗教にすがるのだった。
その中に「ロックンロールこそが世界を救う」と
唱える暗黒教団があった。

その名は・・・

神の犬!

「神の犬」の預言者である凶子は、
死んでいったかつてのロック・スター達を蘇生させ、
理想の王国を築くのだと説いた。

「神の犬」の従順な決死隊員達は凶子のとりおこなう
儀式によって黄泉の国へと赴き、
ジミー・ヘンドリックス、
ジャニス・ジョプリン、
エルビス・プレスリー
等の骨を持ち帰る。

この骨を「人体培養カプセル」に入れれば、
スター達は復元するのだ!!

・・・という。

しかし、
現実世界はさらなる混沌の深みに至っていた。

人々は心の拠り所を失い、情報は混乱し、
判断基準すら失いかけていた。

ついにはアンゴルモア共和国の誤射した
核ミサイルによって地球上の全人類は
絶滅してしまうのであった。

 

その三日後、なんと人体培養カプセルの中から・・・。

つづく

 更に続くとは。しかも、こんなに卑怯な続き方をしたら、Псиは間違いなく「神の犬」を買ってしまうに違い在りません。Псиはヴィジュ好き的に上手く騙されています


 「えびす温泉」に出ていた頃の刺々しさは、すっかり消えた様に見えました。黙してただすべてを睨むだけだった凶子さんは、メイキングでも本編でも普通に笑顔を見せますし、たとえば「洗脳」には猟奇的なタームは一切ありません。それどころか、「♪マルチ商法 ネズミ購 キャッチセールス 自己啓発 霊感商法 アンケート 訪問販売 テレアポ」なんて微妙に明るく歌うバンドになろうとは、Псиは素で思いませんでした。
 もっとも、その数年後に犬神サーカス団の公式サイトを見た時、凶子さんが(笑)付きで普通に喋っている対談テキストが掲載されていたりしたのを見たので、「えびす温泉」の時のパフォーマンスは他所行きの態度だったのかもしれません。Пси、騙されすぎです
 「鎮魂歌〜レクイエム〜」の映像特典などを見ていると、作品全体の雰囲気がすごくシリアスでもどこかにオチを付けないと気が済まないヒトたちなんだろうなあ、とつくづく思います。反対に、先程の「洗脳」にしてもぱっと聴きはただのネタな歌なのに、間奏の「まさにこの世は生き地獄」の連呼で一気になんとも言えない不安を想起させます。初期の筋肉少女帯の歌に通ずる手法と言えるかもしれません。

 Пси、歌で感動させられる上に、ネタをネタとして頑張れるヒトたちが大好きです。どちらも駄目なバンドが多々ある中、Псиは犬神サーカス団にとても魅力を感じています。もっとも、このヒトたちはヴィジュかという問題は残りますが、それはそれとして。
 Псиは、犬神サーカス団の作品に祝福を送ると共に、アルバム「神の犬」が怖くて買えない様なジャケットじゃないことを祈っています

 

平成15年05月03日 Be a gothic-XXI[悪意と悲劇の行く先は]

 というわけで、土曜日恒例だった筈の「Be a gothic」、こっそりひっそり復活です。おやすみしていた理由は国家機密レヴェルにコンフィデンシャルなことなので、ちょっぴりお口にチャックです。まさか、2月のログが消えたので第何回かわからなくなったとか、お金不足でアイテム不足でネタ不足とか、そういった庶民的事由では決してありません。ありませんってば
 月頭の「Be a gothic」では、既に解散しつつも、現在でもその影響が根強いヴィジュ系バンドのアイテムをご紹介。そうしたバンドを紹介することで、YOSHIKIと言われてもPARCOの愉快なCMしか思い浮かばないという新人さんから、「YOSHIKI→市川哲史→嫌悪感」という鮮やかなコンボを決めるディープな方まで、みんなまとめてちょっぴりアレな異空間に引きずり込んでいくコーナーです。
 なお、ここでの記述はあくまでПсиの価値観に基づくものですので、みなさんの価値観とは違っている可能性がある上に、鵜呑みにすると咽を火傷するおそれがあります。

 ちなみに、今日は復活第一弾なので、レビューを行うアイテムが多いです。そのため、ただでさえ長いのに更に長いテキストになるかとは思いますが、ご了承下さい。嫌とか言ったらすんすん泣きながらシベリヤ送りです。


 ヴィジュ好きが着る服のスタンダードと言えば、今も昔も黒服です。もっとも、「黒服」というコトバがどんな服を指すのかといえば、その実態は昭和の発狂小説「ドグラ・マグラ」の後半の展開くらいに混沌としています。もっと言えば、「ヴィジュアル系」の定義を考えるのと同じくらいに、広すぎて曖昧で難しいのです。
 そんな黒服の内容も、EXTASY全盛の頃から比べると明らかに多様性を増してきました。当時の黒服といえば、J.P.Gの独創性溢れる黒い服を頂点に、基本的にシンプルさがイノチ。その頃のバンドといえば、服は白か黒で演奏と演出にすべてをかけるのが殆どだった為、ヴィジュ服はしばらく黒服に無駄なエクステンションをつけていくカタチで進化していきました。
 もちろん、XのYOSHIKIはデビュー当時から姫スタイルを確立していましたから、ヴィジュの服として「ゴシックなドレス」も含まれてはいました。しかし、ヴィジュのバンドに対して女性的・中性的なルックスの構築というムーブメントは残したものの、服装は相変わらずモノクロームのまま。ヴィジュの服装に色彩と華美さを導くには、もうひとつ大きなパラダイム・シフトを迎える必要があるのでした。

 90年代前半の、所謂「第二次ヴィジュブーム」で登場したバンドの多くは、鮮やかな色彩に溢れていました。ヴィジュに多く見られるルックス的な性的倒錯のみを商品化することに成功したSHAZNAが先陣を切ったこのムーブメントの中では、PENICILLINやLa'cryma ChristiやFANATIC◇CRISISなど、黒い服にとらわれないバンドたちが多数活躍。もっとも、起点がSHAZNAだったのでこのブームはすぐに終わりましたが、とりあえず路線変更してSHAZNAの後を追ったのにぱっとしなかったBAISERに黙祷を送りたいところです。
 そんな中、時を同じくして世間的にもその後のヴィジュ界にも大きな影響を与えたバンドが登場、多大なインパクトを振り撒きつつも流星の如く消え去っていきました。そのバンドこそが、今回取り上げる「MALICE MIZER」(読み方:まりすみぜる)です。
 ヴィジュに長けていない方でも、MALICE MIZERという名前くらいは知っているかもしれません。やりすぎな衣装・メイク演奏そっちのけのパフォーマンス等でお茶の間を沸かせたMALICE MIZERですが、一部のヴィジュ好きやメディアからは最強のヴィジュアル系バンドの称号を欲しいままにしました。実際、ПсиもMALICE MIZERが大好きでした。際立った華美さやPVなどでのどう見てもパフォーマンスな演奏スタイルも然ることながら、ファンが抱く「MALICE MIZER」のイメージをしっかりと包容して裏切らないという、イメージ商売として最低限かつ最重要なポリシーを貫いた点が高く評価されたのでした。つまり、自分達で構築した世界を保ち続ける努力を怠らなかったのです。
 それはとても当然のことの様ですが、深夜番組で焼肉屋でインタビューを受けたり、固定化されたイメージの脱却と称してヴィジュ派のみならず世間的にも痛いアイテムを出したりといった、ファンが普通に引けるアクションを平気で行うヴィジュのバンドはたまに発生します。そうした中で、超絶に幻想的な世界観を提示すると同時に絶大な信頼感も同時に与えることができたMALICE MIZERは、真に最強といえるバンドなのでした。

 しかし、「悪意と悲劇」という名前が祟ったのか、MALICE MIZERの活動は波乱の連続。度重なるメンバーチェンジ、節目節目に決まって訪れる不幸、そんな悲惨な巡り合わせに支配されたMALICE MIZERは、1997年のメジャーデビューから2002年の活動休止まで、出したアルバムは2枚だけ。その2枚「merveilles」と「薔薇の聖堂」は、それぞれがとんでもない完成度を誇っている上、まったく方向性が違うのに間違いなくMALICE MIZERな作品に仕上がっていました。
 どう方向性が違ったのかというと、色々と表現の仕方はありますが、ひとつの方法として「色」で表現することができます。Gackt在籍時のMALICE MIZERは衣装や楽曲のイメージが多様な色彩と圧倒的な光量で飾られるのに対し、Gackt以降は黒を基調としたゴシック色の強い印象となっているのが特徴といえます。そうしたイメージを端的に表しているのが、アルバムと同じく2枚発売されたクリップ集です。
 というわけで、今日はGackt在籍時のクリップ集「merveilles-cinq∞parallele-」と、Gackt脱退後のクリップ集「Cardinal」を見ることにしましょう。ちなみに、ПсиはGackt出演の映画「MOON CHILD」を迂闊にも観てしまった為、Gacktに対してちょっとアレなイメージを持っていることを否定できない、ということだけは先にお伝えしておきます。

 まずは「merveilles-cinq∞parallele-」です。これは、メジャーでの最初のアルバム「merveilles」の名を冠した、Gackt在籍中の全シングルのクリップを収録した作品となっています。DVD、VD共にケースのイラストは白地に淡い緑色で空と鳥を象ったもの。VDの限定版には透明のケースが付いていましたが、DVDにはそもそも限定版自体が存在せず、ライナーノートの類が一切無い辺りを考えると、\3,600で5曲入りのクリップだけ、というのはなんとなく搾取感が強い印象を受けます。
 ・・・そんな小市民的感想はさておいて。異世間的にもっとも騒がれた頃のMALICE MIZERのクリップは、今観るとどんな印象を抱くのでしょうか。今更ながらにやっとこのアイテムを買えたПсиは、静かにDVDをPS2にセットします。


 merveilles-cinq∞parallele-[MALICE MIZER]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆☆☆
 映像 :☆☆☆☆*
 ネタ度:☆****

 このクリップ集、本当に質が高いです。楽曲的にはシングル曲を網羅しているので悪いわけがなく、映像的にもそこかしこに使いまわしっぷりの激しさを感じることがあったり、曲によってはスタジオっぽさを感じる微妙なチープさを感じたりもしますが、観ている内にそれらのネガティブな印象を簡単に意識の奥底へ沈めることができます。
 更に、ファン的にはKamiの美麗さを堪能できるというのも美味しい点でしょう。KamiはGackt脱退後、MALICE MIZER復活の直前に急逝されてしまいました。KamiファンだったПсиはしばらく放心状態でしたが、あれから年単位で時間が経過した今なら、素直にKamiの美麗さを堪能することができます。
 ただ、どうしてもGacktの歌い出しやアクションには笑いを禁じ得ない自分がいるのが、とても悲しいところです。これらの楽曲が流通していた当時は考えられなかったことですが、その後のGacktのパブリック・イメージや「MOON CHILD」の影響がその原因ではないか、という考えをПсиは否定できません。あの得体の知れないチンピラさんに、是非ともILLUMINATIの間奏部分(キスしようとする女性の唇を、指で抑えて止める→カメラに向かって流し目)を再現して欲しいところです。いえ、「MOON CHILD」も面白かったですよ?

 ともあれ、普通にヴィジュが好きな方に対しては普通に勧められるアイテムです。ヴィジュ属性さえあれば、通して観ている間に離れられなくなる何かを感じ取れる筈です。それは、ヲタ的に例えれば、なぜか講談社漫画賞を受賞できた赤松健先生の「ラブひな」や、最早ファンが怖くて迂闊なことが言えない設定のアレさ等の全ての突っ込みを加速度的にぶっちぎっている「シスタープリンセス」等に通じる妄想箱庭な情景といえる気がしますが、Псиは「ラブひな」をちゃんと読んだことがありませんし、シスプリはPS版を頑張って一週しただけなので、もしかしたら間違っているかもしれません。なお、上の例えに関して、ヴィジュ界隈サイドからの批判は聞きません
 そんな誰も喜ばない泥沼な話題はともかく、一世を風靡しつつもヴォーカルの脱退という苦境に立ったMALICE MIZERは、箱庭感を更に加速。アルバム「薔薇の聖堂」ではゴシックな世界観を構築し、よりマニアックな方向に突き進んだのでした。DVD「Cardinal」のジャケットが黒と赤を基調にしていることからも、前作「melveilles -cinq∞parallele-」とは志を異にしていることがわかります。
 実際、ゴシック面を強化することによって、世間的な敷居はだいぶ高くなってしまいました。Gacktが在籍していた頃の作品は視覚的な敷居は高かったものの、楽曲的にはヴィジュ界隈にいないヒトでも受け入れられそうな曲ばかり。それに比べ、この頃は復活第一弾シングルからしてインスト曲だったりと、インディーズ的奔放さを見せる様になりました。もっとも、復活後はメジャーのフィールドから降り、流通のみがメジャーという方式に移行していたました。おそらく、コンセプトメーカーのManaは、「世間的敷居」と「箱庭モードの加速」を両天秤にかけ、結果として後者に比重を置いたのに違いありません。
 なんだか話がずれてしまいました。そんな背景の中で、アルバム「薔薇の聖堂」は世に出ました。DVD「Cardinal」は「薔薇の聖堂」に収録されたシングル三部作に加え、その後活動停止までに発表されたシングル三枚のクリップを収録しています。クリップ6曲+ボーナストラック1曲で\5,200はやっぱり微妙に割高な気がしますが、「meleveilles -cinq∞palralleles-」と違ってよく出来たブックレットが付属している為、上手い具合に誤魔化されます
 とりあえず、「meleveilles -cinq∞palralleles-」と合わせて\10,000なのは絶対に作為的だと感じつつも、やっと購入したこのディスクをPS2にセットしてみましょう。

 Cardinal[MALICE MIZER]
 総合 :☆☆☆☆*
 楽曲 :☆☆☆☆*
 映像 :☆☆☆☆*
 ネタ度:*****

 なんてマニアック。復活第一弾シングルにしてインスト曲の「再会の血と薔薇」、歌詞付きだということで「新ヴォーカル加入か」とファンに期待させつつもその実はコーラス隊による歌唱でファンが唖然とした「虚無の中での遊戯」、今度こそ新ヴォーカルが加入したものの「嘘くさいオペラ歌手みたい」「Gacktとのギャップが」と物議を醸し出した「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞(ロンド)」の三曲のクリップは、前作よりも格段に撮影技術が向上。「Le ciel〜空白の彼方へ〜」に顕著などこかハリボテな感じは一切感じません。
 ただ、楽曲自体のマニアックさや、イメージ重視の暗い雰囲気の映像の数々を考えると、あまり一般のヒトに勧められるものではありません。おそらく、ヴィジュを理解しないヒトはテーブルの上の血を浴びた薔薇の花束蝋燭に囲まれて踊り狂う様なシチュエーションは、あまり好まないと思うのです。

 また、一ファンとして不思議な点が多数あるクリップ集でもあります。この頃のMALICE MIZERのシングル曲は、シングル曲一曲のクリップを収録したVDが追加で発表されるのが通例となっていました。しかし、何本かVDシングルが登場しない作品が存在します。元々発売予定が無かった「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞(ロンド)」と、元々発売予定があったのに相次いで発売日が延期になり、遂には発売そのものが中止になってしまった「Gardenia」、活動停止の発表二週間程前に発売されたシングル「Garnet〜禁断の園へ〜」のクリップは、この「Cardinal」に初めて収録されます。シングルも買いつつVDシングルも買っていた搾取対象としてはかなりの優秀さを誇っていたПсиは、「Cardinal」でこれらの曲のクリップを初めて観ることになったのですけれど。
 「白い肌に狂う愛と哀しみの輪舞(ロンド)」のクリップは、なぜか最初のサビで映像が終了。普通にその後も続きそうな雰囲気なだけに、どういう判断があったのか謎です。また、「Gardenia」のクリップは、「Gardenia」発売後のツアー「Gardenia〜夜明けの庭園」の映像と本来のクリップだった筈の映像がザッピングした作品となっています。思えば、「Gardenia〜夜明けの庭園」のツアーパンフレットもライヴ当日には間に合わず、結局半年後に郵送された上に中はツアー中のライヴ写真が満載。一体何があったのでしょうか。とりあえず、「Gardenia」のライヴ映像は色味がおかしい上に、白が基調のクリップ部分と良い具合にギャップを生み出しているのが残念です。
 斯様に誰が見ても不思議なクリップが続くわけですが、「Beast of Blood」と「Garnet〜禁断の園へ〜」のクリップは絶品。むしろ、演出、構成、色彩のバランス、どれをとっても極上のこの2曲2曲のクリップが観られるというだけでも、このDVDを手に取る理由になり得ます

 「Cardinal」を観終わったПсиは、今更ながらに怒っています。もしも活動停止の発表が「薔薇の聖堂」リリース直後であれば、Псиは残念だと思いながらも、少なくとも怒ったりはしない筈でした。アルバム「merveilles」も「薔薇の聖堂」も、作品としてあまりに完成されていた為、もう他にすることは無いのではないかとПсиは勝手に危惧していたくらいでしたから。しかし、「薔薇の聖堂」をリリースした後のMALICE MIZERのアイテムは、「Gardenia」「Garnet〜禁断の園へ〜」にみられる、アンジェリークの様な幻想的甘さという第三の進化の方向性が提示されていたのでした。
 「Gardenia」のクリップ作成中に何があったのかはわかりませんが、少なくとも「Beast of Blood」「Garnet〜禁断の園へ〜」を観たところでは、今まで以上の抜群の映像のセンスも入手。つまり、「薔薇の聖堂」を経たMALICE MIZERは、楽曲の方向性と映像での表現力を持ち、充分に未来がありそうなのに活動を止めてしまったのです。なんて、なんて残念なことでしょう。


 活動停止前のMALICE MIZERの主立った活動といえば、映画「薔薇の婚礼」の制作・出演です。「薔薇の婚礼」はMALICE MIZERの四人がメインキャストとして繰り広げられる吸血鬼物語。音楽は「薔薇の聖堂」からカットアウトされた曲がふんだんに使われ、更にはトーキー映画なので台詞は一切無しなところから、雰囲気と演技への不安を上手くカヴァーしています。
 どちらにも吸血鬼は出てきますが、それでも「薔薇の婚礼」と「MOON CHILD」を同列に並べて評価することはできません。前者の描いているのは徹底した「耽美」ですし、後者はGackt曰く「男気」らしいので、まさに反対のものを描写しているといえます。
 「薔薇の婚礼」も細かい点にムラがある上、やはり敷居が少し高い仕上がりになっています。ですから、Псиには手放しに褒めることはできません。ただし、リアルタイムで観た「薔薇の婚礼」は、今となってはオモイデの中でかなり美化されています。おそらく、これから3年後に「MOON CHILD」を振り返っても、HYDEの表情以外に美化されるものは何も無いでしょう公開三週間でエンディングテーマを謎の洋楽からGacktの曲に変える様な真似をしている時点で、所詮はその程度です。

 なんだか意図しない内にGackt叩きっぽくなってしまったので、最後のアイテムを紹介して切り上げようと思います。MALICE MIZERのコンセプト・メーカーであるManaは、新しいバンド「Moi dix Mois」(もわでぃすもわ)を結成。Manaのブランド「Moi-meme-Motie」(もわめーむもわてぃえ)を音楽的に表現しようと始動したプロジェクトです。また、Manaプロデュースのユニット「Schwarz Stein」(しゅばるつしゅたいん)も、方々のイヴェントに出演している様ですね。
 というわけで、先日発売された「Moi dix Mois」のアルバム「Dix infernal」を買いました。初回版はCDケースが十字開きになっている、Gargoyleの「月の刺」並みに豪華ながら扱いに困りそうな装丁。でも、ヴィジュのアイテムのパッケージングに文句を言っても、それは無駄というものです。上で散々書いたMALICE MIZERへの偏愛っぷりを引きずりつつ、このCDを聴いてみましょう。Псиは今気が立っているので、駄目だった場合はパッケージごと窓から投げ捨てかねません。さて、一体どんな出来でしょう。


 Dix infernal[Moi dix Mois]
 総合 :☆☆☆☆☆
 楽曲 :☆☆☆☆☆
 映像 :(判定不能)
 ネタ度:*****

 Пси、素で泣けてきました。あまりにもこのCDが素敵なので、今日は何も言わずにこのまま眠ることにします。

 Псиは、MALICE MIZERのすべてのアウトプットに祝福を送るとともに、Moi dix MoisをMALICE MIZERとは全く別物としてアイを送信することにします。

 


インデックスに戻る