離れたく ない。

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今や音源のMP3/AAC化は誰もが通る道ですが、その後のCDをどうするかについては議論の分かれる所です。CDを一度MP3化したらさっさと売ってしまうヒト、家ではCDを聴いて外ではMP3を聴くヒト、全部MP3運用だけれどCDがなかなか手放せないヒト。
特にヴィジュ界隈においては、アイテムの希少価値が半端じゃなかったり、インディーズや会場配布などのアイテムは思い入れが強かったりで、「デジタル化したからおしまい」というアイテムばかりでもありません。

加えて、「デジタル化したから売って良いか」というと、厄介な問題がひとつ残ります。そうです、通常「デジタル化」は音源を指すものであって、ライナーノートのデジタル化は蚊帳の外です。音声データに歌詞を埋め込めば問題が解決する、というものでもなく、ライナーノートはできるかぎりブックレットの形状でとっておきたい、というのが人情。黒夢のCruelは右ページの詩があってこそです
ライナーノートのデジタル化という意味では、各ページをスキャンして画像データで持っておく、という単純な手がありますが、もうひとつ「iTunesLP」フォーマットを使う手もあります。これは、昨年「Cocktail」プロジェクトと呼ばれていたもので、iTunes9から導入された機能。音源ファイルにマルチメディアファイル(多くの場合は写真集)を添付して、CDの初回にありがちな写真集やビデオクリップなどを一緒にパッケージングして、同じ様な付加価値をiTunes上でも実現しようというものです。

この手法の良いところは、楽曲と別個にiTunesLPコンテンツを登録・管理できることです。既に登録している楽曲ファイルを触ることなく、iTunesLPコンテンツからそれらの楽曲を指定して再生する、ということができるのです。
希望するならビデオや楽曲をiTunesLP内に埋め込みたければ埋め込むことができます(楽曲タイトルが表に出ない、メイキングやNGシーンなどの利用が推奨されています)し、中身はHTML/CSS/jsですから、適当にがんばればパッケージを作るのは簡単なはず。

というわけで、これでライナーノートもデジタル化してiTunesで参照できるカタチにしてみようと四苦八苦してみました。作成方法としてはAppleのサイトからiTunesLPのテンプレートを取ってきて、中を開けて編集という極めてスタンダードな方法です。
具体的な方法は「How-To: Create Your Own iTunes LP」という記事がとても参考になります。英語ですけれど、スクリーンショット付きですからわかりやすいと思います。日本語の「Appleから開発者へのおくりもの - iTunes LP for Developersを試してみた!」という記事がありますけれど、前者の方がより具体的です。
細かい仕様については、先ほどのテンプレートの置いてあるページにドキュメントファイル(PDF)があります。もちろん英語。

How-To: Create Your Own iTunes LP」がとても詳細な記事ですので、iTunesLPに興味のある方はまずこちらを読んでみて下さい。それでも困った様な所、わかりづらそうなところを、これからちょっぴりお話してみようと思います。あと、Mac前提です


ダウンロードしたファイルは「iTunes-LP-Example.itlp」のはずです。これを右クリックで「パッケージの内容を表示」としておきましょう。itlpファイルの内容が表示されます。各フォルダ・ファイルの概要については、先ほどの参考サイトをご覧下さい。

さて。先ほどちょっぴりお話した通り、iTunesLPコンテンツはiTunesに収録された楽曲とは別に存在します。それでは、どうやってiTunesLPコンテンツがiTunesの楽曲を再生しているのかというと、iTunesLP内で「XID」を指定して再生しています。
XIDはiTunes Storeが楽曲毎に固有に振るID。その楽曲を示す世界で唯一の番号といえます。iTunesLPコンテンツでは、ある楽曲へのリンクを指す場合に、楽曲名やファイルパスを指定するのではなく、このXIDを指定する必要があるのです。

じゃあ楽曲のXIDを調べよう、という話になりますが、そもそもiTunes Storeで配信するに当たって管理用に付けられるのがXID。自分でリッピングした楽曲はiTunes Storeを経由していませんから、XIDはそもそも振られていません。
かといって、適当なXIDを振ってPingやGeniusで利用することは外向きにプライベートIPを使うくらい危険なことです。

じゃあ、どうすればいいのでしょう。プライベート用途であればプライベートのXIDを使えば良いのです。XIDはuuidの利用が認められていますから、MacのTerminalでuuidを生成して、それを振ってしまいます。


uuidgen


Terminalでこのコマンドを使うと「6F092637-666F-49F6-9F77-978627D50B5A」の様なuuidが生成されるので、manifest.xmlとdata.jsにそれぞれ書き込みます(このuuidはAppleのiTunes Extras/iTunes LP Development Guide v1.0のExample(p.7)から引用しました。くれぐれも何も考えずに同じ値を使わない様に注意してください)。もちろん曲ごとに固有のIDが必要ですから、11曲のアルバムなら11回生成する必要があります。

取得したuuidを、JSON形式に基づいたXIDの形式にします。


TEST:uuid:6F092637-666F-49F6-9F77-978627D50B5A


これをmanifest.xmlとdata.jsに書いてしまいます。両方のファイルを見ながらこのお話を聞けば、なんとなくどうすれば良いかは判ると思います。また、デフォルトではsongが9曲、ビデオが2曲という構成ですから、11曲のアルバムなら2曲分itemを増やす必要があります。
コピー&ペーストを行う場合は、末尾のカンマの有無に充分注意してください。
さて、このXIDはuuidgenで強引に作り出したもので、iTunes内のどの楽曲とも結びついていません。これから、iTunes内の楽曲に先ほど生成したXIDを付与する必要があります。

XIDを付与するには、iTunesで楽曲を右クリック、「情報を見る」を選びます。「情報」タブを見ると、こんな風にXIDを入力する箇所があるはずです。

楽曲の情報表示ダイアログ

...あるはず?
あなたが真っ当なiTunesを触っているなら、同じ操作をしても「XID」の欄はみつけられないはずです。この欄を表示するには、隠しコマンドを入力する必要があります。
iTunesを一度終了した後、Terminalで以下のコマンドを入力します。


defaults write com.apple.iTunes WebKitDeveloperExtras -bool true

defaults write com.apple.iTunes booklet-authoring-mode 1


この2行を実行した後、iTunesをもう一度起動してみます。もう一度iTunesで楽曲を右クリック、「情報を見る」から「情報」タブを見ると、「XID」欄が表示されていると思います。

参考にしたサイトだと一行目しか書いてありませんが、Псиの環境ではこれだけでは表示されなかったので、二行目も実行したら表示される様になりました。これらは隠しコマンドですから、実行については自己責任でおねがいします。

ここに、先ほどのXIDを貼り付けます。


TEST:uuid:6F092637-666F-49F6-9F77-978627D50B5A


1曲ずつアルバム内の全曲に、先ほど生成した固有のXIDを貼り付けます。「次へ」ボタンはこんな時に便利です。こうしてiTunesの楽曲側でも登録が終わったら、とりあえずiTunesLPファイルとiTunes楽曲の紐付けは完了です。itplリストをiTunesに持って行き、「iTunes-LP-Example」というHard Rockジャンルの楽曲を再生すると、いかにもサンプルな画面が表示されます。「Play Album」をクリックするか、「Song List」で曲を指定して「Play Song」をクリックすれば、楽曲がちゃんと表示されるはずです。
再生してもナビゲーションが上手く表示されない(グリッドが表示されるだけで何も表示されない)場合はdata.jsなどでカンマなどを忘れていないかを確認しましょう。曲が再生されない場合は、楽曲のXIDと各ファイル内で定義したXIDがちゃんと合っているか確認しましょう。

ここでお話したのは楽曲の紐付けだけですが、各画面のレイアウトやアイテムそのものに関することはHTMLやCSSで指定することができます。HTMLの知識があれば、参考サイトを見ながら充分好きに作ることができると思います。


と、長々お話してきたiTunes LPですが、はっきり言ってライナーノートを埋め込みたいだけなのにこの手間はひどいです。一昔前のCD-EXTRA的なことがHTMLで簡単にできるといえば聞こえは良いですが、そこまでを望むにせよ望まないにせよ、一定の手間はかかります。
ひな形HTMLを作っておけば多少手間は軽減されるでしょうけれど、何よりuuidの生成と楽曲ファイルへの埋め込みを一々行う...楽曲から離れたコンテンツを作っているのに楽曲の情報にタッチしないといけない...のはしょんぼり感が満載。そもそもiTunesLPの作成自体が個人とか野良天使にフォーカスしたものではありませんから、Appleを責められたことではありませんけれど。

iTuensLPのライナーノート自動埋め込みツールが現れるか、あるいは他の手段ができるまで、スキャンデータを画像ファイルで持っておくことになりそうです。というか、それはCDをリッピングするよりよっぽど敷居が高いので、結局面倒になってCDが手放せなくなっちゃうのが関の山ですけどあはははは。

...はあ(仮想樹海)

♪〜FOR DEAR[清春]

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