乱れる明日に毒を宿して。きみの瞼に、空が崩れる。

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Псиは夏がきらいです。
夏の空はあんまり青くて、いらないことをたくさん思い出してしまうのです。
何より、夏の活動的なイメージが本当に曲者で、その活動的な夏に膝を抱えてぼんやり過ごすことをいちいち後悔して、振り返って何も成さなかった夏にただただしょんぼりするのです。

今年は早く夏が来てしまったので、Псиの憂鬱もひとしお。
そんな憂鬱を払おうと仮想映画館に行ったのですが、ちょうど良い時間に面白そうな映画はなくて...しかたがないので仮想iPadの中のサイコロアプリで上映映画抽選会を行ったところ、ちっとも見る気の無かった映画を引き当てたのでした。


もしドラ〜もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

評価: ☆☆☆**

おもったいじょうにちゃんとしてました。手放しで「面白かった」とは言えなくて...深く考えずに見れば普通に青春映画だし面白いけれど伸びしろはまだあるんじゃないかしらと思うお話で。

以下は詳しい感想です。ストーリーのすごく重要なイベントを知ってる前提で話しています。もしもあなたが見る気がある、ネタばれはいやだというなら、今日のお話は最後まで飛ばした方が安全です。
ちなみに、Псиは原作もアニメもまったく知りません。ドラッカーの本は大昔にちょっとだけ読みました。その程度の知識なので、原作すきーさんやアニメすきーさんにとってはおかしなことを言ってるかもしれません。

というか、ПсиもAKB絡みのお話+TBS制作という点でしかこの映画を知らなかったので、「思った以上に」という冠が付くのですけれど...それはさておいて。


はたして、彼女はいったいどんな病気だったのかしら
と、そんなみもふたもないお話はそれくらいにして、ざっくりとした感想はさっきの通りですが、特に気になった点を3つ挙げようと思うのです。ただ、それぞれに付随するお話がえらく長いので注意。ちゅうい。

1イベントを経ただけでの心境の変化が急すぎでは。本気になることに恐怖して事なかれ主義を通す監督と、そんな監督に不信感を持つ生徒。監督への挽回のチャンスを主人公は何度か告げるのに、結局自信が持てないまま監督は動かず、チーム分裂のピンチ。そこへはじめて自分の考えを叫び、自分のせいだと泣く監督。驚く生徒たち。その後はチームが結束し、監督も自信を取り戻して指導に熱気を取り戻す...というのですけれど。
まず、Псиはわだかまりのないヒトの集合をあまり信じていません。もちろん、そのイヴェントが契機になったとしても、更に結束を固めるためのイヴェントがもう1つあっても良かったのではないかと思います。そもそも、この状態では口も利いてくれなかった筈の部員が主人公にいつココロを開いたのかわかりませんし。おそらく、「暴力沙汰になって親の反発で云々」という先の教師のエピソードがあったのですから、たとえば不慮の事故で怪我をした生徒の親が乗り込んで来るけれど、ちゃんとそれに教師が立ち向かうとか。そしてPTAをこちらに惹きつけるとか。
尺の都合であまり大きなことはできないでしょうけど、監督と書店組と親友母以外に大人が皆無なのがシンプル化した結果か、部員の目線ということか、思う所は色々とありますけれど。
顧客の定義のその後
目標を達成した彼らのその後
ドラッカーの経営論から、主人公は野球部を定義し、野球部の目標を定め(ドラッカーを知る前の目標は「甲子園に出場」、その後の目標は「顧客に感動を与える」ことですが、結果としての前者が必要であることを主人公はその後語っています)、更に「顧客=野球部に関わるヒト、更には野球部自身」であることを学習しますが、主人公が顧客として想定するのは休養中のマネージャー1人だけに見えます。
その休養中のマネージャーは、予選決勝の前日に亡くなってしまいました。マネージャーのかぶっていた麦わら帽子はベンチに置かれ、みんな打席に出る前に麦わら帽子にタッチし、願を掛けています。この戦いは亡くなったマネージャーに捧げられたものであり、即ち(少なくとも試合中の)顧客とはマネージャーのことを指すのでしょう。

いろんなことがあって彼らは勝利を掴み、遂に地区大会の優勝=甲子園出場を決めました。さて、彼らはこの後どうなるのでしょう。まず、「甲子園に出場する」という目標は叶ってしまっています。少なくとも主人公にとって想定していた、そしておそらくチームメンバーにとってもそうであろう最大の顧客は、もう現世にいません。彼らはいつまでも麦わら帽子をベンチに置き続け、亡きヒトのためだけに試合を重ねるのでしょうか。いつまで? もう最大の目標は果たしてしまっているのに。

「目標は甲子園!」→「甲子園出場! みんなよかった!」で終わるのは心底判りやすいですけれど、判りやすい答えが正しいことは殆どないというのはドラッカーが言っている通りで。目標を最初に定めたら、映画の終盤でそこに着地するのはある意味当然で、できたらその先のサプライズを見せてほしかったのです。
その先は、きっと「顧客」と「目標」の再定義を含むはずです。そもそも、彼らの練習は他の部活動も巻き込み、そうして巻き込まれたメンバーは律儀に応援に来ているわけです。仲間さえ仲間じゃなかった冒頭と違って、彼らの「関係者」は圧倒的に増え、あんなに素敵な応援ができるまでになっているのですから、彼らを「顧客」すなわち「喜ばせる対象」と捉え直して、次の目標...彼らに最高の感動を与えること...たとえば「全国制覇」とかを宣言すればよかったと思うのです。今年叶えば「連覇」に目標を再設定ですし、叶わなければ悲願として以降の世代に種を蒔いてくれる筈です。

ドラッカーは、事業の目的を「顧客価値の創造と維持」だと言っています。彼らは(ドラッカーに基づいたのは数人ですけど結果的に彼ら全員は)様々なアイデアで自らを強化し、他の部を巻き込んで自らの価値=顧客にとっての価値を高めました。ドラッカーの経営論に基づくなら、彼らはその価値をできる限り維持する努力をしなくてはなりません。
後半〜予選最終戦はそもそも監督無双でしたから、主人公がドラッカーに知恵を借りる必要はなさそうです(ご本人登場は置いておきます)。でも、最後の最後に...そう、自分に価値を見出す顧客がいる限り、自分たちはその価値をできる限り維持しないといけないことを主人公には思い出してほしかったのです。主人公が言うのが一番きれいでしょうけど、他の選手でもいい、観客や自分たちを支えてくれたヒトの存在を喜んで次の目標をぽつりと言う、そんな最後があったら、Псиは素直に拍手できたと思うのです。そもそも目標を最初に定めたら映画の最後にその目標は達成されるのがお約束で、その後のサプライズをПсиは望んでいた、というのもあるのかもしれません。新しく提示する目標は演出次第で王道の終わりにも驚きを呼ぶものにもなれそうです。

後半あんまりドラッカー関係ないのでは、というのはさて置いても、彼らの高校野球生活における最大のピークで話が終わってしまった様な...新井素子の...あれは「いつか猫になる日」でしたっけ、「めでたしめでたしというのが信じられないの」の「めでたしめでたし」に正に合致する様で、その後を考えるともにょってしまってダンスはうまく踊れないのです(© 井上陽水)
さっきПсиがPTAとか言い出したのは、「関係者」により広がりが持てるかしら、と思ってのことで。...そこは置いて、この終わりの場合日々の野球部員と彼らについてもう少し下地を鏤める必要がありそうですが、それでも見た後の印象はだいぶ変わったと思うのです。

青春映画として普通に面白い、感動もできる、というところはありましたけれど、まだまだのびしろはあったと思うのです。そこが残念だったし、なによりもにょってしまって、Псиは上手く拍手をすることができませんでした。


そんなПсиの特殊な事情はありましたけど、それでも最終戦...ドラッカー絡みが終わった後は皮膚が動くくらいすてきな描写がいくつもありましたし、部員もマネージャー組も敵校もしっかり存在感を見せつけましたし、とにかく頭から最後までちゃんとまとまっていたのです。
途中からは弱小野球部のサクセスストーリーで、そういう爽快さは充分にあります。...そちらだけを望むとドラッカー部分いらないって話にもなりかねませんけど。


そんなまとまらないぐねぐね感を抱えながら、アーバンチャンピオン3Dをプレイしなおしたのです。初回プレイでは2つ進んだきりで相手を一度もマンホールに落とせないまま自分が落下というふがいなさでしたが、今日突如思い立ってプレイしたら18回勝利してSTREET FIGHTERになれました
これでПсиもストリートファイターですよ、筋肉少女帯の「バトル野郎〜100万人の兄貴」をBGMに砂漠を練り歩く日々ですよひゃっほう(ただしその後は良い所なく瞬殺)

♪〜EGO DANCE[SOFT BALLET]

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このページは、Псиが2011年7月14日 23:52に書いたブログ記事です。

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